弘前市が弥生スキー場建設計画跡地に建設しようとしている
「岩木山弥生地区自然体験型拠点施設」の問題点(その3)
次に『岩木山弥生地区自然体験型拠点施設基本計画書』(この計画書の委託は市健康福祉部児童家庭課であり、委託を受けた業者は株式会社キタコンである。)を見ながらその概要と問題点について述べる。 本会の提案との違いに注目してほしい。
計上予算は、中心になる岩木山学習館の建設工事費として10億4千万円。18年度から始めて、21年度に総完成をめざしている。総工費は約19億円である。
計画面積は39.3haである。現弥生いこいの広場北側隣接部上部から両沢に挟まれた広くなだらかな尾根を西から東に潅漑用調整人工池下部までの範囲となる。南側は大倉沢をまたいで南に隣接する尾根にも広がり沢に沿って殿様道路の下部に続くことになる。
この範囲に上部から里山共生ゾーン・エントランスゾーン・多目的広場ゾーン・プレイパーク・ジャブジャブ広場・緑地広場・屋根付き回廊・野外イベント広場・大屋根広場(が二つ)・岩木山学習館・(殿様道路の下部南面に)農業自然体験ゾーン・ネイチュアートレイル・果樹園ゾーン(高木)・果樹園ゾーン(低木)・生態池(ビオトープ)・昆虫の森・調整池を建設、整備するというものである。まさに現在のいこいの広場に見られる建造物その他施設の三倍にもなる広さと多さである。ここにまず一番の問題点がある。これら多くの建造物や施設を支える基礎や改修工事がまた広範であり、これが「出来るだけ自然に配慮した」という但し書きはあるものの、自然を破壊することは間違いがない。工事だけでなくそれらが完成後も自然を破壊していくことは明らかである。
この計画に見られるその他の懸念され問題視されるべきこと
■景観の破壊
特に多数、広大な建造物によって景観が壊される。高地にあるので、遠望の際はパースペクテイブによく目立ち岩木山の美しい山麓の景観を破壊してしまうという問題がある。■土石流の問題
施設、設備の建設予定地は青森県発行の岩木山火山ハザードマップ水蒸気爆発災害予想区域および土石流予想図とマグマ噴火災害予想区域および土石流予想図内(一部かかっているところもある)に位置している。現実的なことでは1975年百沢土石流被災時にここの大倉沢と壁倉沢の支流の殿様道路上部と下部で土石流が発生している。
このような事情を受けているから「防災・排水溝・現況地形の確認」が念入りに実施されねばならないのだろう。そのため、土木工事に6億4千万円、測量・調査・設計に約2億円を計上している。無駄である。造らなければこのような出費はない。■予定されている事業が弘前市の他の施設等で代替えが可能であること
りんご公園や他の教育関係施設、図書館の活用などを推進すべきである。さらに、弘前市は岩木町、相馬村と合併する。当然現在両町村にある類似の施設・設備は活用出来るのである。
たとえば岩木町岳にある岩木山トレイルセンターでは「岩木山の総合学習」が可能だし、隣接するミズバショウ沼やブナ林を利用すれば、この岩木山弥生地区自然体験型拠点施設が意図する事業は十分出来るのである。相馬村にはこれまた立派な遊びを中心とする「ロマントピア」があるし、スポーツ中心の遊びは岩木山麓にある「岩木町総合公園」で出来るのである。
なんのための合併か、合併の論理からこの問題を考えると実に矛盾した計画であるかが分かる。
地方自治体の財源が赤字なので「合併」が推し進められた。その合併を前にして「類似性」が非常に強く、大がかりな「自然破壊」必至であるこの計画は即刻断念すべきである。加えて、合併して人口増をしたその未来世代にただ借金を残すようなことはしないでほしい。本会幹事会と弥生ネットでは、計画されている体験学習等は建物がなくても出来るし、森の中を歩くだけで十分可能です。発見と創作学習などはわざわざこのような施設でなくとも学校で工夫をすれば十分可能で、自然の森に一緒に入ってくれる人の養成が先決だととらえています。
(その4へ続く)