弘前市が弥生スキー場建設計画跡地に建設しようとしている

「岩木山弥生地区自然体験型拠点施設」の問題点(その4 最終回)

「計画」に見られる「施設計画の規模」に関する問題点

(1)岩木山学習館 
 体験、学習、発表などに学校利用を想定するとあるが、各学校がふるさとをテーマに課外活動などで岩木山学習を当然すべきではないか。地域学習はコミュニテイスクールとしての小・中学校にあっては当然されるべきことである。受験指導に偏重し、地域学習がないがしろにされているその不備を「集団的に補足して」お茶をにごすためにこれらの施設を活用などと考えることは教育者の手抜きである。本気になれば何も「この施設がなければ出来ない」ということではない。

(2)里山共生・果樹園・農業体験ゾーン
 里山共生の学習は久渡寺山麓の既存施設でも可能だ。果樹園・農業体験は学校で企画し、農家に実習に入ればいい。または農繁期の援農活動の復活を図ればいい。

(3)生態池(ビオトープ)
 既存のため池はスキー場建設にともない人工的に造られたものであって自然的な池塘ではない。生態系を育み云々とあるがビオトープエリアとしては不向きである。弘前市小沢地区にある「とんぼ池」の活用、岩木川や弘前公園の堀での生態系観察も可能。その他土淵川も整備されたので観察しやすくなった。ただし、整備されすぎて観察の対象物は減っている。土淵川の現況は「整備されすぎの見本」として関係者はじっくりと観察してほしいものだ。

(4)多目的広場ゾーン
 遊びの要素を取り入れたものにするという構想らしいが、遊びとは遊具や遊ぶ場所を与えて成り立つものではない。何もないところからどのようにして遊ぶかを考えることが大事であり、本当の子どもたちの遊びはそこから始まるものだ。またそこから子どもたちは何かを自主的に学ぶものだ。

(5)昆虫の森
 自然生態系を保護し整備し、昆虫や小動物の観察ができる「昆虫の森」として整備するとある。馬鹿げている話しだ。整備したら虫はいなくなるし、動物もやってこなくなるのが当然だ。こんなことをしゃあしゃあと書き連ねて、よしとする会社もさることながら、これに委託して疑義を呈しない市もまた同類だろう。開いた口がふさがらない思いだ。

総じて言えること
 この「計画」のすべてに渡って「発想と構想、基本理念・趣旨」等がいい加減過ぎる。耳障りのいい「自然環境保護」用語的な言葉をただ並べているに過ぎない。
 かつて本会が提案した文書の中で使用したものと同じか同義の字句や表現が至るところに見られる。
 たとえば、「計画」2ー1施設計画の概要の「岩木山弥生地区の地域性を考慮しながら、できるだけ自然地形や生態系を損なわないで、緩やかな傾斜地形の弥生地区の特性を活用しながら施設整備をおこなうことを前提として計画の検討を行った。」などだが、これは前述した本会が示したコンセプト、つまり「スキー場、スカイライン自動車道路、ゴルフ場、ホテルなどの建設は岩木山の景観を十分損ねている。コニーデ型山容の岩木山はその緩やかな山麓を含めた山容が美しく、それを支えているのは緑溢れる森だ。」と同義である。
 しかし、本会は基本的には自然改変を伴わないという姿勢であるから、この計画は人工的に「自然改変」してしまうということで真っ向から対立するものである。人工的に改変する側にとって、不都合な「景観を損ねる」ということにはまったく触れず、それを造ろうとしているのである。
この計画には他にもまた、本会が提示したものと少なくとも表現上同じ部分がある。
 となれば本会にこの計画が具体化される前にひと言、相談なりがあってしかるべきではないのか。全く、つんぼ桟敷に置かれ、寝耳に水でこの計画に接して驚き以上に憤りを感じている。

さらなる問題点と懸念
・施設、設備完成後の管理計画が示されていない。
・人件費、人員配置等についてはまったくない。建物だけで事業は成り立たない。
・特に冬季間の活動計画(スケジュール)が見えない。
・将来にわたる市民教育の中でこの「計画」がどのように位置づけられているのかが見えない。
・教育関係からの要望や、またはこの「計画」に対する意見(反対意見も含む)などが市民にまったく提示されない。
・学校関係から完成後、何を目的にどのように活用していこうとしているのかにかかわることが提示されない。

 つまり、この「計画」は「ハード」面だけが先行して「ソフト」面が欠如だらけであるということだ。コンピュータにたとえれば「オペレーションシステム」も「アプリケーション」も入っていない「箱」を作るだけのものである。よって当然もっとも大事で人的な「オペレーター」の養成などは不問にされている。

本会のささやかな願い
 10年前にサラ地とした伐採地は速やかに森林として回復を図るべきだ。このための予算措置には反対しない。森林の回復のための協力は惜しまないし、森林回復それ自体がすばらしい「自然教育」である。子どもや市民たちと森を育てることを含めた岩木山の自然学習には極力協力する。本会が持っているノウハウをどんどん提供するし、人的な支援も惜しむものではない。

8日午後6時市役所前で会いましょう 跡地問題を考える市民の集いです