<第4回> 「岩木山弥生地区自然体験型拠点施設整備事業」をめぐる残代金支出の違法・不当性 

2) 必要性に欠けるムダな支出  その2

(3)青森県においては、財政改革の一環として、子どもらの自然体験活動の拠点施設についてこれを縮小し、施設へ依存しない自然体験活動の推進へと切り替えようとしている。
 すなわち、2005年3月に策定された「青森県行財政改革実施計画平成2004年度?平成2008年度)」においては、
「近年の利用実態が主として子どもの体験活動等となっている青年の家及び県内3箇所の県立少年自然の家(梵殊、種差、下北)については、少子化、利用状況、立地バランス、施設の老朽化等を踏まえ、2箇所の県立少年自然の家へ集約することとし、青年の家は平成2005年度末をもって、県立下北少年自然の家は平成2007年度末をもって、廃止する」とし、
 施設の廃止の一方で「施設へ依存しない自然体験活動のプログラム開発等を行い、そのモデル事業を実施する」などの方針が打ち出されている。
 このことは、一方での財政難と他方での少子化やこの種施設の利用実態に照らすならば、今後は、子どもらの自然体験活動を保障するにしても、いわゆる「箱モノ」の設置建設ではなく、これに依存しない自然体験活動の創出・推進を図るべきであることを示している。
 自然体験活動・自然体験教育の推進は、「箱モノ」建設というハード面よりも、自然観察指導員などの人材育成や手を加えないままの自然のなかでの自然観察のノウハウの蓄積等、ソフト面に重点を移すべきなのである。
 
 このような近時の青森県における類似施設の動向をも考慮すれば、もはや「大型児童館」などは無用の構想であるし、弘前市として「周辺整備する」として新たに「箱モノ」を建設することとなる本件整備事業を推進することは、著しく合理性を欠くものである。
 そして、そのような事業の用地買収のために1億円を超える残代金を支出することは、やはり「最少経費による最大効果」「必要かつ最小限度の支出」という原則に反することになる。

(4)岩木山弥生地区は、11月下旬ころから翌年3月末ころまでが降雪期間であり、4ヶ月の間雪に閉ざされる。
 そして、この間の積雪は常時1メートルを超えるものであり、年によっては3?4メートルもの積雪となることもある地域である。
 岩木山の東面弥生地区は降雪・積雪の多い場所である。だからこそ、スキー場建設が計画されたのである。
 
 このような地域に本件「基本計画書」にあるような「自然体験型施設」を建設した場合には、冬期間の施設利用状況はどのようになるのか、その期間の除排雪対策や暖房等にはどの程度のコストがかかるのか等、積雪地域であることの特性に照らした費用対効果の検討が不可欠である。
 しかしながら、本件「基本計画書」では、「今後の計画推進に当たっては、積雪の多い地域であることから、省エネルギー対策、雪対策あるいは雪の利用対策などについて、十分に検討を加えながら進めることが必要である」と述べるだけであり、前述のような費用対効果の検討がなされた形跡はない。
 このようなやり方では、多額の費用をかけて施設を整備したものの、雪が積もる4ヶ月間は低調な施設利用に終わり、他方で維持のための経費ばかりが嵩む一方となる、という事態をも招きかねない。
 かようなおそれのある施設用地の買収の残代金として1億円余もの公金を支出することは非常に不合理である。

次回に続く