平成12年3月31日・午前9時40分、鳴沢川を守る会会長神直臣・副会長井上祐一等、同会内外の地元住民有志30名と、岩木山を考える会内外の一般市民27名の、合計57名は「鰺ヶ沢スキー場拡張工事差止請求訴訟」をおこしました。わたしたちは、広範な合同原告団の組織を目指し、現在関係者間で調整中です。
これからの活動について、みなさんのご理解とご支援を心より申し上げます。まず、訴訟全般について委任した横山弁護士のコメントをご紹介いたします。
鰺ヶ沢スキー場拡張工事差止請求訴訟について弁護士 横 山 慶 一
1、平成12年3月31日提訴(青森地裁弘前支部)
原告:57名(うち鳴沢川流域住民30名)
被告:株式会社コクド2、求める裁判の内容
(1)コクドは、スキー場拡張予定地において、立木の伐採、樹根の採掘、開墾、その他の土地の形質を変更する一切の行為をしてはならない。(2)コクドは、スキー場拡張予定地において、スキー場の建設、その他建築物の建設、その他一切の工事をしてはならない。
3、請求の根拠
(1)水利権
スキー場拡張予定地(以下「本件土地」と略称)を含む大鳴沢・小鳴沢流域部分は、藩政時代から、水源涵養地とされてきた(藩政時代には、本件土地に、水源涵養のためにヒノキアスナロを植林。明治時代には、当時の鳴沢村議会が、水源涵養のための山として地元で管理したいという理由に基づいて、土地の払い下げを青森県知事に要請)。
一方、鳴沢川の水量は、流域における農業用水を賄うのに十分ではなく、明治時代から水争いが絶えなかった(死者が出たこともある)。深刻な水不足という状況は現在も変わっていない。本件土地を水源涵養保安林に指定することを求める請願が鰺ヶ沢町民700名からなされている。
本件土地において立木の伐採等の工事を行うことは、流水・伏流水に影響を及ぼし、農業用水の確保を困難ならしめる。(2)土石流による、生命・身体・財産に対する侵害の危険性
本件土地を含む大鳴沢上部は傾斜角30度の急斜面であり、崩落地形は土石流の堆積物の存在が確認されている。
現在の「鰺ヶ沢スキー場」開設に当たって行われた自然環境影響調査においても、大鳴沢谷頭部の地形が不安定であり、将来土石流の発生する可能性があることが報告されている。
このような不安定要素を持つ大鳴沢流域の本件土地で、立木の伐採等の工事がなされると、雨や融雪水が地面に浸透せずに地表を一時に流れることになり、それにより土砂の流出が促進されて、土石流発生の危険性を増大させる。
現在の「鰺ヶ沢スキー場」域を水源とする湯船川・徳明川の水が、降雨後に汚濁するという現象が発生しているが、これはスキー場開設に伴う森林伐採により雨が地面に浸透しなくなっていることが原因である。
土石流災害が発生すると大規模な人命・財産の被害が出ることは1975年8月に岩木町百沢で発生した土石流災害の実態から明らかである。
生命・身体に対する侵害は勿論、土石流災害によって生活基盤を支える重要な財産に対する侵害が発生すると、仮に事後的に補償がなされたとしても、それだけでは回復できない被害が残る。しかも土石流災害の場合には、「天災である」という理由で、事後的な補償すら与えられない場合が多い。
土石流災害から生命・身体・財産を守るためには、土石流発生の誘因となるような工事を予め行わせないようにする以外に、方法はない。
鰺ヶ沢町民700名は、本件土地を土砂流出防備保安林に指定することを求める請願も行っている。(3)自然享有権(環境権)
本件土地には岩木山で最も美しいブナ林があり、また、青森県内で最も高い場所に生育して特異な樹形を形成しているヒノキアスナロの群落もある。
日本昆虫学会自然保護委員会は、本件土地を含む岩木山全体を、昆虫類の多様性保護のため重要地域に指定している。
本件土地は、イヌワシ・クマゲラ・ツキノワグマ等の貴重な動物たちの生活圏になっている。さらに岩木山は津軽の霊峰であり、「ふるさと富士山」の人気投票で一位になったほど美しい山である。
原告全員は、このような貴重な生態系や美しい景観を持つ岩木山を保全する権利を有している。
スキー場設置が生態系を破壊することは明らかであり、またそれが岩木山の山肌にバリカンで刈ったような「傷痕」を残して景観を破壊することも明らかである。以上
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