リゾート開発に想う

 本日、2月18日付の日本経済新聞によると、公共事業の景気浮揚効果には限界があると宮沢大蔵大臣がしぶしぶ認めたとあり、更に日本の公共事業のあり方について国際的視点からも問題性を指摘されているとの特集記事を載せていた。
 厚生白書によると建設業など公共事業による経済的波及効果は1.7倍程度でしかなく、これに対し福祉の経済的波及効果は2.3程度になると書いてある。つまり1億円の投資で建設業は1億3000万円程度の経済効果があり、社会保障関連事業の場合は建設費にとどまらず、そこで働く人の賃金とそれがいずれ8割方が消費に回るので、1億円の投資で2億3000万円程度の波及効果を生むという。
 今、日本は超高齢社会を迎えようとし、今年の4月からは介護保険制度が始まり、もっとも焦眉の課題は福祉施設の建設であるのだが、あいもかわらず公共事業に依存するという見識が残念だ。介護保険料は取られても入る施設が足りないのである。これは、国家的詐欺行為といえるのではないか。介護保険の運営母体は地方自治体なのでそこに責任が求められるのだが、そういう現実に見向きもしないのが情けない。
 岩木山を削るという発想もここから来ている。「リゾート法」という、かつての社会党も賛成した法律が後ろにあるわけだが、そもそも巨額の投資をして、「虚飾の楽園」を作って、人を呼び込んで金をもうけようという精神そのものが人間的にあさましい。これでよく、子供の教育やしつけを語れるものだとあきれてしまう。日本中のリゾート開発が失敗しているのは、国民がその虚飾性を肌で感じているからではないのか。
 山を削るリゾート開発は、国際的に、特に欧州周辺では既に時代遅れであり、むしろ今は「エコツーリズム」などの方がはるかにブームとなっており、観光収入もあがるのに、情けなく思う。

弘前市 蟻塚亮二


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